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 茄治の親は、俺を仕方なく引き取ったという感じで、あまり快く思っていなかった。  両親とも働いているから家事をやるように言われた。  元々自分の母親は夜働いていたせいか、あまり家事をやらない人だったし、俺が料理も洗濯もしていたから、ここでもやることはほとんど変わらない。  俺が通っている高校は、この家から自転車で行ける距離で、前の家よりよほど近かったから、そのまま通うことになった。  ただ、家の中に味方はいなくて、俺は邪魔なんだと思った。  義弟の茄治も、俺が来たせいで部屋を半分取られて不満そうだった。6畳の部屋に俺の布団や机が増えたら、誰だって狭くも感じるだろう。 「ただ年上ってだけで兄さんって呼ばなきゃいけないの?」  とか親の前で平気で言う。 「別にいいわよ。そんな呼び方しなくても」 「ふーん」  そんなことを言いながら、2人だけの時はからかうように兄さんと呼んできた。 「兄さん」  と呼ばれると、わざとだってわかっているのに何故かうれしくなる。 「あんた彼女とかいんの?」 「い、いるわけない」 「顔だけはモテそうなのに」  モテたことなんかない。それに俺は女に興味がなかった。  でも、男にしか興味ないことは絶対知られるわけにはいかなかった。気味悪がられるし、下手したら部屋を追い出されてしまう。  それにかっこいいのは茄治の方だ。俺は自分の女顔にコンプレックスがあったから、正直うらやましかった。いや、違う。  切れ長の瞳も、凛々しい眉も、西洋人のような高い鼻も、形のいい耳も、色気のある唇も、声変わりしたばかりの低い声も、意外と筋肉質の体も、全部俺の好みだった。  まだ中学生とは思えない。身長も俺より高い。  茄治は、俺に1ミリも気を遣ってなくて、多分俺のことを家政婦だとしか思ってなかったんだと思う。俺としてはその方が気楽だった。変な風に慕われるよりも、見下されていい。変なことを考えなくてすむ。  でも、同じ部屋で寝泊まりしていると意識せずにはいられなかった。顔がものすごく好みな上に、性格が悪いのもそそられる。自分がM気質だとは薄々気付いていた。罵られながらも、それが快感で、悟られないように過ごすのが大変だった。

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