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運命なのかは後にして㉔

真由(まゆ)…何?」 『拓巳(たくみ)、 今から会えない?』 「え?」  俺は、特に深く考えず駅前のカフェを指定した。 「ごめんね、休みなのに呼び出して」   なんか…真由のやつ綺麗になったな…… 「いや、いいよ。で、何?」 「はい、これ。郵送でも良かったんだろうけど色々面倒だから」  懐かしい見覚えある小さな箱に、俺の字で開封禁止と書かれてあった。今まで忘れていた。どうでもいい物なのに、俺は捨てる事が出来なかった。 「別に捨ててくれて良かったのに……」 「いや、これだけ年季の入った箱に開封禁止とか気味悪いし…だから返す」 確かに…… 「わざわざありがとう」 「……拓巳なんか雰囲気変わった?」 「そうか? 変わんねぇけど」 「あっもしかして運命の人見つかったとか?」 「はぁ?! なんでそうなんだよ」 「私は見つかりましたけどね〜〜」 彼女は、自慢げに左手薬指の指輪を俺に見せた。何か言ってやろうと考えたが、由真の幸せそうな顔を見たらそれで良かったって思ってしまった。 「おめでとう…もう式はやったの?」 「まだ…これからなのって自慢しにきたんじゃないのよ。はぁ…拓巳さぁちゃんと自分と向き合ってみたら?」 「……なんだよ急に」 「あんたさ、自分の幸せ考えた事ないでしょ…自分は平気みたいな顔してへらへらしてさ…本心がいつも見えなかった…だから不安だったの」  そう付き合った相手に、言われる言葉…貴方って本当に私のこと好きなの? 何考えてるか分からないだ。   「……ねぇ? 今の人どんな人?」 「どんな人って…今、微妙で……」 「はぁ?! さっさと謝んなよ…どうせ拓巳がデリカシーないこと言ったんでしょう?」   デジャヴ? 何これ刺さる…… 「そんなに俺ってデリカシーない?」 「ない」 「即答かよ!」 「で、何やらかしたの?」  俺は、出来るだけ掻い摘んで話せる部分を彼女に話した。由真は、俺が話し終えるまで黙って聞いた。 「阿保だな」由真は、テーブルの上にあるティーカップを持ち上げ一口飲んだ。   うっ刺さる…… 「やっぱり……?」 「好きなら尚更、しかも元カノに会ってるとか後から知ったら怒るだろう普通」 「……はい」 「相変わらず、仕事以外ポンコツ脳ね」     刺さるし、またまたデジャヴ? 「今日、ちゃんと会うって言ってきてるの?」 「いや、言ってない」 「はぁ?! 馬鹿じゃない!」 「ええ……なんで怒ってんの?」 カフェの大きなガラス窓越しに、長身で黒縁眼鏡の男と一瞬目があった____   「どうしたの?」 「え…な…にが?」 「顔色悪いわよ」   人違いだろう…… 「……ごめん…ちょっと帰るわ」テーブルの上にコーヒー代を置いて立ち上がった。 「うん、あっ拓巳、これ」 「ああ…」忘れそうなった小さな箱を持った。 「……じゃね。拓巳」 「幸せにしてもらえよ…真由」 「当たり前じゃん」  俺は、ニッコリ笑う由真に手を振った。  

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