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体育祭編『第9話*』
「っ……!? う、うっ……せんせ、んんっ!」
首を振って逃れようとしたのだが、両手で頭を捕まれてより深く口付けられる。唇に噛みつかれ、内頬を舐められ、逃げ回る舌を絡め取られてしまう。精液特有の青臭い匂いが鼻についた。
「ん、う……ふ……あっ」
噎せそうになったところで、ようやく唇を離される。軽くケホケホ咳き込んでいたら、市川がニヤリと口角を上げてこう言った。
「お裾分けだよ、夏樹」
「お、お裾分け……?」
「俺のは上でも下でもいっぱい飲んだことあるけど、自分のはほとんど味わったことないだろ? 自分の精液の味はどうだった?」
「なっ……!?」
何を言い出すかと思えば、そんなことか! 一体どこまで変態なんだ、この教師は!
夏樹は体操服が絡まった腕を振り上げ、市川をポカポカ殴りつけた。
「もう最低っ! せっかく久しぶりに会ったのに、口を開けば変態発言ばっかり!」
「そう怒るなって。夏樹だって、なんだかんだこういう俺が好きだろ?」
「そっ……」
そんなことない、と言いかけたのだが、整った顔にじっと見つめられて、つい言葉に詰まってしまった。
(うう……先生、ずるい……)
これじゃ何も言えなくなってしまうではないか。本当は変態発言も大概にして欲しいのに、結局流されるままやりたい放題やられてしまう。
「……バカ」
せめてもの憎まれ口を叩き、夏樹はぷいっとそっぽを向いた。
自分でもどうかしてると思う。彼の変態っぷりを知りながらも、別れるどころかどんどん好きになってしまう自分がいる。
(それに、この変態っぷりがなくなったら先生じゃなくなっちゃうだろうし)
もちろん、こんなこと死んでも口にしないけど。
「さてと、じゃあ本番いってみるか」
「あっ……」
ひょいと身体を抱え上げられ、跳び箱の上にうつ伏せに押さえ込まれる。懐かしいシチュエーションに、思わず心臓がドキッと跳ね上がった。
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