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初めてのお稽古編『第17話』
市川が、着物の帯に手をかけながら言う。
「ホントは俺のマンションで稽古する予定だったんだけどなー。夏樹専用の着物や道具も用意してあったし、抹茶やお菓子も買って来てたし。正座で痺れないように立礼式 の準備もしてたのにさ」
「立礼式?」
「椅子と机でやる点前だよ。夏樹、正座には慣れてないだろ? 最初はそっちの方がやりやすいと思ったんだけどなー」
「そ、そうなんですか……」
そこまでしっかり準備していたのか。なんだかちょっと悪いことをしてしまった。
「でも先生、『俺のマンション』ってどういうことですか? 先生の家はここですよね?」
「あ、言ってなかったっけ? 実は、俺が個人的に借りてるマンションが屋敷の近くにあるんだよ。実家に居づらい時によくそこを使ってるんだ。夏樹が来た時はちゃんと泊まれるように、夏樹部屋も作ってあるんだぜ? ホテルに泊まるより気楽だし、金もかからないし、いいだろ?」
「はあ、確かにそうですけど」
「というわけで、やることやったらマンション行こうな。初めて稽古やって疲れただろうし」
「……え? あ、ちょっ……」
するりと帯を解かれ、着物の前身頃をガバッと肌蹴られる。襦袢や肌着も一緒に剥かれ、白い胸元が露わになった。
「ちょっと先生、何してるんですか! マンション行くんじゃないんですか!?」
「行くけど、やることやってからって言ったじゃん。これ、稽古用の着物だから汚しても丸洗いできるし、心配いらないぞ」
「そういう問題じゃありません! こんなところでイチャつかないでくださいよ!」
「大丈夫だって、ここは稽古用の離れだからな。稽古する人以外誰も近づかないから、覗かれる心配もないぞ? あ、それとも覗かれてみたい?」
「なっ……!」
何を考えているんだ、この変態教師は!
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