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性活指導編『第13話』

「ああもう、ホント信じらんない……っ!」  整えられたベッドの上で、熱々のピザを齧る。  次に夏樹が目覚めたのは午後九時ちょっと前だった。何時間失神していたのか定かではないが、気付いた時には後始末がされていて、身体もベッドも全部綺麗になっていた。  それはありがたいのだが……。 「これじゃ明日登校できないじゃないですか……!」  何度かベッドから下りようとしたのだが、あまりに腰が痛くて寝返りを打つのがやっとだった。トイレに行くにもよろよろと壁を伝いながら歩かなければならず、到底一人で学校生活を送れる状態ではなかった。  だが夏樹の足腰を潰した本人は全く反省しておらず、ヘラヘラ笑ってこう言うだけ。 「まあいいじゃん。一日くらいサボっちゃえば」 「いいわけないっ! というかそれ、現役教師の台詞とは思えませんよ。ホント、先生いつか絶対クビになりますよ」 「それは困るなあ。せめて夏樹が卒業するまではあの高校にいたいしさ」  こめかみに軽くキスされ、夏樹はむくれたままそっぽを向いた。  クビが嫌なら怪しまれるような行動はとるなと思うのだが、この変態教師には今更何を言っても無駄な気がする。 「なあ、卒業したら一緒に住まない? お前のための部屋空けとくからさ。あ、なんなら今から『夏樹部屋』作っとく?」 「……考えときます」  口ではそう言ったけれど、自分の中で答えは決まっていた。  同棲したら毎日のように腰潰されるんだろうな……とやや憂鬱になりながら、夏樹はピザを頬張った。

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