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保健の授業編『第15話*』
「ん? お前らここで何してんだ?」
「うわぁっ! 市川先生!?」
「なんでそんなとこにいるんスか!?」
驚愕する生徒たちに向かい、市川は爽やかな口調で答えた。
「いやね、授業中にちょっと気分悪くなった生徒がいたもんでさ。保健室連れて来たのはいいけど藤枝先生がいなかったから、奥のベッドに寝かせてたんだ」
……よくもまあ、そんな口から出まかせが出てくるものだ。布団を被りながら少し呆れてしまった。
(でも、これで不審に思われたらどうしよう……)
頭から布団を被りながら耳をそばだてる。心臓は今やうるさいくらい音を立て、手のひらは汗でびっしょりだ。
先生、お願いだから上手いこと言いくるめてよ……?
「それで、だ」
生徒たちから反論される前に、市川が続ける。
「お前らはなんでここにいるんだ? サボりか? 教師としてサボりはちょっと……」
「あ、いや……俺たちは、その……」
「ふ、藤枝先生に用があったんス! でも今はいないんでまた出直します!」
「失礼しましたー!」
そう言い置き、三人の生徒はバタバタと保健室から逃げて行った。さすがに授業サボりの現行犯として教師に目をつけられるのは御免だったらしい。
「……やれやれ、行ったか」
三人が完全に逃げて行ったことを確認してから、市川がドアをピシャリと閉めた。
(た、助かった……)
夏樹は布団の中で大きく息を吐いた。汗で濡れた手のひらを拭い、そろそろと布団から顔を出す。
ベッドに戻ってきた市川は、サッとカーテンを閉めてニヤリと笑みを浮かべた。
「お待たせ、夏樹。邪魔者はバッチリ追い払っといたぞ」
「……はいはい、ご苦労様です。でも、もとはと言えば先生がこんなところでやろうとするから悪いんですよ?」
「そうか? お前だって興奮してるように見えたけどなぁ」
そう言って彼がのしかかってくる。
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