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冬休み編『第20話』

「おう夏樹、お待たせ」  市川が大量の買い物袋を抱えて戻ってきた。新しい鉢や肥料も購入していたので、かなり重そうだった。 (先生……)  胸が痛い。せっかく俺のためにホームセンターに連れてきてくれたのに、ここで別れなきゃいけないのか。  先生はこんなに俺のことを愛してくれているのに、俺は河口に身体を貸しに行かなきゃいけないのか……。 「……夏樹? どうかしたのか?」  市川が訝しげに様子を窺ってくる。  思わず泣きそうになったが、夏樹はあえて心を鬼にして冷たく口を開いた。 「すいません。俺、ちょっと用ができたんでここで失礼します」 「えっ? 用ってなんの?」 「……先生には関係ないですよ。それじゃ」 「ちょ……おい、夏樹!」  後ろから市川の声が聞こえてきた。  夏樹は駆け足でその場から逃げ出した。目から涙が滲んできたが、気のせいだと思い込むことにした。 (先生、ごめんなさい……)  でも俺は、あなたをクビにしたくないんです……。 *** 「遅いじゃねぇか。何してたんだよ」  河口に指定された公園に行ったら、開口一番に文句を言われた。  ムカついたので、夏樹も負けじと唇を尖らせた。 「……俺にだって予定があるんです。いつでも時間の融通が利くとは思わないでくださいよ」 「なんだよ、その態度。センセとの関係、バラしてもいいのか?」 「……何かって言うとすぐそうやって脅してくるところ、嫌いです。そもそも先輩だって大学の推薦狙ってるんでしょ。こんな風に後輩を脅してるってバレたら、それだって危うくなるんじゃないですか?」  そう言ったら、河口にぐっ……と胸ぐらを掴まれた。 「オレを脅そうとはいい度胸だな? そんなことしたらお前だってタダじゃ済まねぇぞ?」

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