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冬休み編『第21話』

「……死なばもろともです。お互い、危うい綱を渡ってることは変わりないんですから。あなたが俺と先生との関係をバラすなら、俺だってあなたにヤられたこと全部バラします。それはさすがに困るでしょ」 「てめっ……」 「だからもう、先生に怪しまれるような呼び出しはやめてください。筋肉馬鹿の変態教師ですけど、市川先生は意外と頭のいい人ですよ。あまり変なことをしているとすぐに感づきます。あなたのやってることはただのストレス発散……だから、受験が終わるまでは我慢してつき合ってあげます。でも冬休みの間はいろいろ予定がありますので、呼び出しにも注意してもらわないと……」  そう言いかけた時、横からパッパッ、と車のクラクションを鳴らされた。  慌てて河口も胸ぐらを放した。  何かと思って首を捻ったら、見覚えのある車が目に飛び込んできた。  あれは……あの車は、まさか……。 「おい、お前ら何してるんだ?」  運転席から市川が降りてくる。  それを見た瞬間、一気に指先が冷たくなった。 「せ、先生……!? なんでここに……!」 「なんか様子がおかしかったから、お前の後をつけてきたんだよ。こんなところで一体何してたんだ?」 「別に……。河口先輩から大学の過去問を譲ってもらってただけですよ」 「嘘つけ。胸ぐら掴まれてたじゃないか。なんか言い争ってる雰囲気だったし」  そんなところまで見ていたのか。これでは嘘がバレバレだ。  唇を噛んでいると、市川は河口を睨んだ。普段は気のいい大人のお兄さんも、怒ると意外と迫力があった。 「お前、夏樹に何してたんだよ。変なことしてたらタダじゃおかないぞ」

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