135 / 282
冬休み編『第22話』
「……何もしてないっスよ。先生こそ、生徒のプライベートに首突っ込まないでくれます?」
「お前らが本当に仲良くしてるんだったら、俺だって何も言わないよ。険悪な雰囲気だったから声かけたんだ。もしおかしなことをしてたら、こっちだって……」
「せ、先生」
今にも河口を殴りつけそうな雰囲気だったので、夏樹は慌てて間に入った。
「本当になんでもないんです。河口先輩とは、受験のことでいろいろ話をしてて……」
「……そうなのか? でも受験って、普通は全部終わってからアドバイス聞くもんなんじゃ」
「いや、でも……こういうのって早いに越したことはないじゃないですか。だからもう使わなくなった模試の問題集とかも譲ってくださいね、って先輩にお願いしてたんです」
「……でもそれだけなら、わざわざデート切り上げて会いに行く必要なくね?」
「それは……先輩、冬季講習で忙しくて、今しか時間がとれないって言うから」
「…………」
「だから、本当になんでもないんです。先生が心配するようなことはないですよ」
大嘘も甚だしかったが、そう言うしかなかった。この場で本当のことなんか言ったら、市川は絶対河口を殴ってしまう。そんなことをしたら、学校をクビになってしまうかもしれない。
正当な理由があったとしても、こういうのは手を出した方が負けになるのだ。
「……そうか……。夏樹がそこまで言うなら、信じるよ」
根負けしたのか、市川が目力を緩ませた。
「じゃあ、俺は先に帰ってるからな。何かあったらいつでも言えよ?」
「ええ、もちろん……」
どうにかこうにかごまかせたようだ。よかった。罪悪感は残るけれど、それもあと三ヶ月の辛抱である。河口に釘も刺したわけだし……きっともう大丈夫だろう。
夏樹はホッと胸を撫で下ろした。
だがその時、公園に見覚えのある男が三人やってきた。先日の乱交パーティーのメンバーだった。
ともだちにシェアしよう!