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冬休み編『第22話』

「……何もしてないっスよ。先生こそ、生徒のプライベートに首突っ込まないでくれます?」 「お前らが本当に仲良くしてるんだったら、俺だって何も言わないよ。険悪な雰囲気だったから声かけたんだ。もしおかしなことをしてたら、こっちだって……」 「せ、先生」  今にも河口を殴りつけそうな雰囲気だったので、夏樹は慌てて間に入った。 「本当になんでもないんです。河口先輩とは、受験のことでいろいろ話をしてて……」 「……そうなのか? でも受験って、普通は全部終わってからアドバイス聞くもんなんじゃ」 「いや、でも……こういうのって早いに越したことはないじゃないですか。だからもう使わなくなった模試の問題集とかも譲ってくださいね、って先輩にお願いしてたんです」 「……でもそれだけなら、わざわざデート切り上げて会いに行く必要なくね?」 「それは……先輩、冬季講習で忙しくて、今しか時間がとれないって言うから」 「…………」 「だから、本当になんでもないんです。先生が心配するようなことはないですよ」  大嘘も甚だしかったが、そう言うしかなかった。この場で本当のことなんか言ったら、市川は絶対河口を殴ってしまう。そんなことをしたら、学校をクビになってしまうかもしれない。  正当な理由があったとしても、こういうのは手を出した方が負けになるのだ。 「……そうか……。夏樹がそこまで言うなら、信じるよ」  根負けしたのか、市川が目力を緩ませた。 「じゃあ、俺は先に帰ってるからな。何かあったらいつでも言えよ?」 「ええ、もちろん……」  どうにかこうにかごまかせたようだ。よかった。罪悪感は残るけれど、それもあと三ヶ月の辛抱である。河口に釘も刺したわけだし……きっともう大丈夫だろう。  夏樹はホッと胸を撫で下ろした。  だがその時、公園に見覚えのある男が三人やってきた。先日の乱交パーティーのメンバーだった。

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