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冬休み編『第23話』

 彼らは市川がいることに気付いていないのか、やってくるなり、いきなりこんなことを言い出した。 「おい河口、なっちゃんはまだかよ?」 「いい加減待ちくたびれたんだけど。早く突っ込みてーよ」 「なんなら今からなっちゃんの家に行って、みんなでマワすとか……」  三人の言葉はそこで途切れた。市川の姿を見とめて、みるみる青い顔になっていく。 「え、ちょ……なんで市川センセがいんの?」 「やべぇよ……早く逃げろ!」  踵を返そうとした三人だったが、市川に素早く襟首を掴まれた。 「……おい、今のどういうことだ」 「あ、いや、それは……」 「お前ら、夏樹をレイプしてたのか? 夏樹を脅して、よってたかってマワしてたのか!? そうなんだな!?」  三人が真っ青になって首を竦める。 (せ、先生……)  こんなに怒っている市川を見たのは初めてだ。肌が痺れるほどの殺気を滲ませ、こめかみをぴくぴく震わせている。下手に触れたら怒りのオーラで切り裂かれそうだった。  三人はすっかりビビッてしまい、余計なことまでペラペラ喋り始めた。 「オ、オレらのせいじゃねーっスよ! 全部河口が悪いんス!」 「河口に誘われたから、乗っかっただけっスよ! 主犯じゃないっス!」 「河口が一番やりたい放題やってたんスよ! オレらはまだほとんどしてねぇっスよ!」 「なんだと……!?」  市川が河口を睨みつけた。目尻がナイフのように鋭くつり上がっていた。  捕らえていた三人を突き放し、河口に向かって勢いよく拳を振り上げる。 (まずい……!)  仮にも現役の高校教師が未成年を殴って怪我をさせたりでもしたら、クビどころでは済まなくなる。  夏樹は慌てて二人の間に割って入った。 「やめて先生! 殴っちゃダメ!」  市川が驚愕したのが見えた。けれど振り下ろした腕は止まらず、固めた拳がもろに頬に直撃した。

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