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番外・正月編『第8話*』

 自由になった口を開け、夏樹は悲鳴混じりの嬌声を放った。 「ああ、はあぁ……あぁん、だめぇ……っ!」 「おう、いい声出てるぞ、夏樹。気持ちよさそうで何よりだ」 「あぁあっ! だめだって、せんせ……またイっちゃ……!」  甘い痺れが全身を満たし、生理的な痙攣が止まらなくなる。吐精してもいないのに絶頂と同じ快感がずっと続いて、自分でも抑えようがなかった。  気持ちよすぎて恐ろしいくらいだ。自分が自分でなくなってしまうような……自分が壊されていくような……それでもやめて欲しくはない、不思議な気分。  喘ぎながら夏樹は、何度目かの除夜の鐘を聞いた。 (ああ、もう新年か……)  古い年が過ぎ去り、新しい年がやってくる。それと同じように、古い自分もいなくなって新しい自分に生まれ変わるのかもしれない。きっとこれはそのための儀式なのだ。  柄にもなくロマンチックなことを考えてしまい、内心で自分を笑った。 「……ああ、俺もそろそろイきそうだ。夏樹、いつもの台詞……言ってくれ」 「じゃ、じゃあ……代わりにこれ、取ってください……!」  これ、と背中で縛られたままの腕を振るったら、市川は素早く絡まっていた服を取り除いてくれた。  自由になった腕を市川の首筋に回し、きゅうっと後孔に力を込める。 「せんせ、ください……中にいっぱい、出して……!」 「ああ……全部受け取ってくれよな」  腰を叩き付ける強さとスピードが増した。快感の大波に攫われ、溺れる者のように市川にしがみついて、悦びの涙をこぼし続ける。  ようやく市川が低く呻き、腹の奥で灼熱が爆発した。同時に夏樹の欲望も体外で弾け、腹の間で白濁が散った。  荒っぽい息を吐きながら、市川が覆い被さってくる。その姿がやや滑稽で愛おしく見えた。  夏樹は呼吸を整えつつ、耳元で囁いた。 「……先生、あけましておめでとうございます」 「おう、あけおめ。今年もいっぱいラブラブしような」 「はいはい」  結局、市川と繋がったまま年を越してしまった。  その事実に若干恥ずかしさを覚えながらも、夏樹はこの幸福がずっと続くようにと願った。

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