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春休み編『第34話』
「先生は……俺のどこがそんなに好きなんですか?」
「はっ?」
「俺……自分で言うのもなんですけど、先生にそこまで気に入られる要素、持ってないですよ? 運動もできないし、料理も作れないし、お茶のお作法も知りません。先生は『可愛い』って言ってくれるけど、そんなの若いうちだけでしょ。十年も経てば今の若さもなくなっちゃいますし。それ以外で……先生が気に入っているところ、何かあるんですか?」
「夏樹……」
「外見以外で、俺の好きなところってどこなんですか?」
多分自分は、祐介に嫉妬しているわけではない。自分に自信がないのだ。
顔と身体以外で変態教師を引きつけられるものがないとわかっているから、自分よりも優れている祐介を妬んでしまう。二人の仲を疑いたくなる。
市川からすれば自分なんて、十歳も年下の子供にしか見えないだろうし……。
「はあ……」
市川が小さく息を吐いた。呆れているようにも、笑っているようにも聞こえた。
ちょっとムッとして「なんで笑うんですか」と言おうとしたら、たくましい腕に抱き締められた。
「バカだな。顔と身体しか好きじゃなかったら、二、三回セックスして飽きてるよ。性格が可愛いからこんなに好きになったんだ」
「……別に俺、可愛げのある性格じゃないです」
「可愛いよ。普段はツンとしてるのに、すごくピンポイントでデレてくれるところとか。隠れた努力家で、身体柔らかくしたり、ケーキ作る練習してくれたり、お茶を勉強しようとしてくれたりさ」
「…………」
「それに、俺のこと追いかけてわざわざ京都まで来てくれた。そんな可愛い事してくれるの、夏樹だけだよ。というか、お前の顔と身体にしか興味ないんだったら俺、相当の節操無しじゃないか。いくらなんでもそこまで変態じゃないぞ?」
「……あっ」
服の裾から手を入れられて、胸元をいやらしく撫で回された。指先で突起をピン、と弾かれ、思わず息が詰まる。
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