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第2話

 実はこの同僚にもバレている。以前にも全く同じようなシチュエーションがあった。そう、手塚は惚れやすいし、それが非常にわかりやすい男なのだ。 「なになに? 狙ってるって」  羽田と呼ばれた男は興味津々といった風に尋ねてきた。 「こいつ男が好きなんで! ヤバいでしょ!」  羽田の興味を引いたことに、同僚はますます調子に乗る。手塚は無表情を決め込みながらもまだ羽田の顔を堪能している。羽田は少し困ったように笑いながら 「そう。でも彼にだって選ぶ権利ってものがあるからね。それにそういうこと、むやみに人に話さないように」  同僚の悪乗りを柔らかく制した。  少し気まずい空気になったところで作業が再開され、羽田は別の場所へと移動した。手塚は嫌な気持ちになったどころか、羽田の絶妙なフォローにますますときめいてしまっていた。また惚れてしまったなあ、そしてまたバレてしまったなあ、と思いながら。  それから二時間ほどで大掃除が終わり、社長の挨拶で今年の仕事は締めくくられた。皆各々暮れの挨拶を交わしていてざわざわとしている中、 「さっきは大丈夫だった? 嫌な思いしたね」  手塚に羽田が声を掛けてきたのだ。手塚はまたも目玉が飛び出しそうになった。 「僕は大丈夫です。……羽田、さん、こそ」  いきなり同性から恋愛対象にされていると知らされ、羽田こそ嫌な思いをしたのではないだろうかと手塚は気を揉んでいたのである。 「ううん全然。ね、この後予定ある?」 「いえ、ないですよ」 「ちょっと飲みにでもどう? 仕事納めの後の一杯的な」  信じられない。今日初めて会ったばかりの、一目惚れした相手が、飲みに誘ってくれるだなんて。 「あ、はい、喜んで」  普段会社の飲み会など出席したためしがない手塚は、二つ返事で応じた。 「諸々片付いたら連絡するから、連絡先きいてていい?」  そう言われ、とても自然な流れで、連絡先まで交換できた。

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