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「おい!!聖夜起きろ!!遅刻すんぞ!!」 俺の名前は、柊木翼。どこにでもいる高校二年生だ。 んで、今目の前でぐーすかぐーすか寝てやがるのは、同じアパートの隣に住んでる幼馴染、真野聖夜だ。 こいつを毎朝起こしに来るのが毎日の日課だ。 「んん… むり… あと30分…」 「それおまえ何回目だよ!いい加減にしろ!今日は朝から愛しの優里ちゃんと登校するってはりきってたじゃねえか!!」 「うわっやば!そうだった!!!」 聖夜が飛び起きる。 「はあ… あと10分で準備しろよ。弁当はそこに置いといたから。」 そう言って俺は弁当が置いてある机を見る。 聖夜の家は父子家庭でお父さんが朝早くから家にいないので、料理好きな俺が弁当も作ってやっている。 「へへっわるいな、翼いつもさんきゅな!お前の弁当まじ美味い。俺の1番好きな食べものは翼の弁当!」 寝起きだとは思えないほど輝かしい笑顔でそう言う聖夜に、胸が苦しくなる。 「そんなこと言ってもなにもでねえからな。」 「わかってるって!でもホントのことだから。」 また胸がぎゅっとなる。 聖夜とは小さい頃から家が隣同士で、お互い片親っていうのもあってすぐに仲良くなった。 (あんな可愛かった聖夜ちゃんがこんなイケメンになるとはな…) 透き通ったような金に近い髪色に、少しくせの入ったふわふわの髪の毛。白く小さい顔に、少し切れ長まぶたに色素が薄い茶色い瞳。足も長く筋肉も程よくついていて分けて欲しいくらいだ。 それに比べて俺は、背は平均より低いし顔もどこにでもそうな普通の高校生だ。 別にそれに不満はないし満足している。俺たちの関係は、まあ。親友といったところだろう。聖夜とはずっと一緒にいても飽きないし楽しい。あっちもそう思ってくれていると思う。 「翼!おまたせ!いこうぜ」 「おう。」 ************************ 「優里ちゃんとは、どこで待ち合わせてるんだ?」 「駅前!だから悪いけどそこからは別々になっちまう。ごめんなぁさみしいだろうけど…」 聖夜が申し訳なさそうにいう。 「なにいってんだ、別に寂しくねーよ。むしろうるさいやつと一緒に行かなくてよくてうれしいね」 思ってもないことを言ってみる。 「うわ!!!そういうこと言っちゃう?でも翼は照れ屋だからなぁ」 「誰が照れ屋だ!!!」 怒りっぽく言ってみる。 「翼が怒ったぁぁ」 と聖夜がわらいながら言う。 どうでもいい会話だと思いつつも、俺は聖夜と話すこういう空気が好きだ。安心するし、幸せだとも思う。 「あ!聖夜くん!」 と、可愛らしい鈴を鳴らしたような声が聞こえる。 同時に胸が痛む音がする。 「優里!おまたせ。」 愛おしいものを見るような眼差しにまた胸が痛くなった。俺には絶対に向けられることのない眼差し。 優里ちゃんこと、橋本優里は、俺たちと同級生で、俺らの学校一の美少女だ。 そして… 真野聖夜の恋人だ。 交際歴はまだ浅く、付き合ったのも最近だという。 聖夜も学校で1番と言われているほどの美形なので、お似合いカップルだとみんなから憧れられている。 「じゃあ翼、俺たちいくからまた学校でな!」 「おう…!」 うまく笑えていただろうか。変じゃなかっただろうか。あの二人を見るたびに、胸が締め付けられる。 もう察している方も多いと思うが 俺、柊木翼は 真野聖夜のことが好きだ。 いつからと言われればわからない。でも自覚したのは中学2年生の時。プールの時、聖夜の前で着替えるのが恥ずかしかったことや、聖夜の裸体を見るだけで赤面してしまったことから聖夜への気持ちと俺の恋愛対象が「男」であることに気づいたのだった。 さっき料理好きと言ったが、そもそも父親があまり帰ってこなくて寂しい思いをしているであろう聖夜に美味しい料理を俺が作ってやりたいと思い、始めたことだった。 保育園に通っていた頃は、小さくて気が弱かった聖夜をいつもいじめっ子たちから守っていた。なのにいつの間にか背も越されて、どんどん周りの人と打ち解けて人気者になっていくあいつを見て寂しさと同時に、自分のダメさが身にしみてしまい、避けてしまった小学生時代もあった。でも、どんな時でも俺のことを嫌わずにそばにいてくれて、不器用なとこもあるけど本当は優しい聖夜にどうしても心惹かれずにはいられなかった。 (ほんとにいい男なんだもんなあ、あいつ…) だから、モテないはずがなかった。中学生の時もバレンタインには長蛇の列ができていたし、卒業式の時なんか学ランのボタンは、1つも残っていなかった。 しかし、聖夜は告白を毎回断っていた。 俺は気になって1回聞いたことがある。 「なあ、聖夜。なんでお前あんな告られてるのに誰とも付き合わないんだ?試しにとか… あるだろそういうの。」 既に自分の気持ちに気づいていた俺は、聞かずにはいられなかった。 そうすると、思っても見なかった言葉が聖夜から飛び出した。 「だって、彼女とかよりもさ、翼といた方が絶対楽しいって思うから。」 そうやって、あの俺の好きな笑顔で言うのだ。 正直言って、聖夜の笑顔は世界一だと思う。 かっこいいだけじゃないのだ。笑った時に見える歯並びの良い白い歯や、目に出来るしわがとてもかわいい。 (そんなのずるいだろ。そんなの言われて好きになるなって言われる方が無理だ。) その日は、テンションが上がりすぎて寝れなかったことを覚えている。 だから、愚かにも俺は、期待をしてしまったんだ。 もしかしたら聖夜も。俺と同じ気持ちなのかもしれないと…

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