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高校入学の日。俺は、高校も一緒に通えることが嬉しくて浮かれていた。 「今日から高校生かー。また翼と同じ学校なんて嬉しいよ。同じクラスなれるといいな!」 「そうだな、その前にお前は1人で起きれるようにしろよ。毎朝起こすのにどんだけ体力使ってると思ってんだ。」 本当はそんなこと思っていない。聖夜を起こすのは俺の特権だし、同じ学校で嬉しいなんて言われて必死に頬が緩むのを抑えてるくらいなのに。どうしても聖夜の前では素直になれない。 (同じ学校で死ぬほど嬉しかったのは俺の方だ。) 俺達が通う学校は、偏差値が高く聖夜は余裕だったが、少しばかり頭が弱い俺は必死に勉強した。 合格通知が届いた時は、受験勉強が実った達成感とまた聖夜と一緒にいることができる安心感で泣いてしまった。 ************************ 学校に着くと、大勢の新入生があちらこちらに散らばっていた。 「え、まってあの子超可愛い」 「ほんとだ、モデルかなんか?」 「ちょっとお前連絡先聞いてこいよ」 「無理だって。周りからの印象絶対最悪じゃねえか」 というような周りの声が聞こえる。つられて同じ方向を向くと。 木の幹にもたれかかってスマホをいじっている1人の女の子がいた。 (うわあこりゃすっげえ美少女だな。) スカートから見える長く細い真っ白な足。さらっさらで綺麗な黒髪。顔も白く小さい。スマホを見ている目のまつ毛はとても長いことがここから見てもわかる。どこかの清楚系アイドルグループにいそうな顔だ。 とは言っても俺は生粋のゲイなので、その子を見ても可愛いくらいにしか思わない。 「うわっ…かわいい…」 そう隣から聞こえて見上げてみる。 嫌な予感がした。 そこには顔を真っ赤にして口を抑える幼馴染がいた。 俺はこの顔を知っている。 ずっと見てたから。こいつのそばで、そういう顔をした女の子達をたくさん。 この顔は… 恋をしている顔だ。 ほんとに俺は愚かだったと思う。あの時言ってくれた俺と一緒にいる方が楽しいという言葉だけで、ずっと1番近くにいれると、もしかしたら聖夜も俺と同じ気持ちなのかもしれないと、期待していた馬鹿な俺は。 でも心のどこかでわかっていたんだ。聖夜は俺のことを「友達」という顔でしか見ていないことを。 「やっば… ねえ!翼!今の子めっちゃ可愛くなかった?!!どうしよ、俺一目惚れしちゃったかもしんない」 俺はこんな聖夜の顔見たことない。 泣きそうだった。胸が痛くて苦しくて。伝えてしまいたかった。お前が好きだと。世界で1番お前のことが好きなのは俺なのだと。 でも俺はその時決めた。 この想いはしまっておくと。 聖夜のそばにいるために。あの笑顔をずっと見ているために。 そこからは早かった。 「翼!友達伝いに橋本さんの連絡先ゲットしたんだ!」 「緊張して今日近く通ったのに、声掛けれなかった… 俺こんなチキンだとはおもってなかったわ…」 「今日直接喋れたんだけど、橋本さんって性格もいいんだ!優しくて包容力もあって… 」 そうやって、楽しそうに話してくる聖夜を見て何度胸が苦しくなったことか。 「いやー恋愛ってこんなに難しいもんなんだな…俺知らなかった。」 (俺だって、好きなやつの恋を近くで応援するのがこんなに辛いだなんて思わなかったよ…) そんな気持ちを押し殺して聖夜に言う。 「話聞いてる感じだと、橋本さん結構聖夜に気があるように聞こえるけどな。まああと少しでいけるんじゃないのか?」 すると聖夜は気持ち悪いくらいにやけるんだ。 「ええ!そうかな!!!やめろよ!期待させるの!違ったらどうするんだよ!!」 そうやって否定する顔を鏡で見せてやりたい。言葉と真逆の顔してっからな。お前。 でもそのふたりがくっつくのは本当に時間の問題だった。 橋本さんも、かっこよくて優しい聖夜にどんどん惹かれていったのだった。 そして俺が最も聞きたくなかった言葉が聖夜の口から飛び出す。

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