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今日は土曜日だ。昨日は宣言通り、聖夜の好物ばかりを詰め合わせて弁当を作った。
その時の聖夜の表情は今でも脳裏に焼き付いている。
「まっじで俺の好物ばっかじゃん!!!こんなに作るの大変じゃなかった?」
「別に。お前に作るの最後だったし、どうせならいいもの食わせてやりたいなって。昨日も言っただろ…」
途中で照れくさくなって声が小さくなってしまった。
顔がきっと真っ赤だろうから顔が上げられない。
それを察したのか聖夜は
「お前ほんとかわいいなあ。優里がツンデレに萌えるって気持ちわかるかも。」
優里という言葉にむっとなる。
「お、男相手に可愛いとか使うなよな。なんもうれしくない。」
「悪かったって。たまには夕飯食べに行くから作ってくれよな。」
その言葉にまた心が踊る。
「待ってるから。」
珍しく素直な俺に目を丸くして聖夜は笑顔で頷いた。
そんな昨日のことを思い出しながらぼーっとしていると。
ピンポーン
ドアのベルが鳴った。
「ごめーん、翼。母さん今手離せないからちょっとでてくれないー?」
母さんが野菜を切りながら俺に言う。
「りょーかい」
誰だろうと思いつつ、ドアを開けるとそこには見たことのない綺麗な男が立っていた。
「どうも、はじめまして。」
(うっわめっちゃ綺麗な人だ… )
髪が長いのか後ろでまとめていて、一瞬女の人か思った。
「は、はじめまして…」
「本日、隣に引っ越して参りました。太宰透と申します。ご挨拶をと思いまして…」
と、紙袋を渡される。
「大したものじゃないですが皆さんで食べてください。」
「あ、すみません。わざわざ。えっと、柊木翼と言います。こちらこそよろしくお願いします。母が今、手が離せない状況ですみません…」
「………」
じっと見つめられて、どきっとする。
「…?あの何かついてます?」
「あ、なんでもないんです。すみません。お母様にもよろしくお伝えください。では。」
と、綺麗な顔で微笑んだ。
「はい…」
ドアを閉めると同時に息を吐き出す。
「緊張した……」
なんか今までに会ったことのないタイプの人だった。
確かにイケメンだけど、不思議な雰囲気を纏っていて聖夜とは違うタイプの…
美人。と言われてしっくりくるような人だった。
でも、なんだか少し自分と同じ匂いがしたような気がした。
(いや、あんな綺麗な人と俺を一緒にしちゃ失礼すぎるだろ)
この太宰透が、俺の運命を大きく動かすことになるなんてこの時の俺は微塵も思っていなかったんだ。
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「あ… やっちまった…」
月曜日の朝。俺はいつものように自分の弁当を作ろうのしたのだがいつもの癖で、聖夜の分もつくってしまったのだった。
(今日からあいつは、愛妻弁当だっての!!)
そう思うとまた泣きそうになってくる。
でも、あいつを起こしにいかないといけないのでぐっとこらえる。
(これだけは、絶対に俺だけの特権だからな。)
弁当は、自分で食べようと思いドアを開けて外に出る。
同時に隣からもドアを開ける音が聞こえた。
「あ」
「あ…」
昨日引っ越してきた、太宰透さんだった。
「おはよう」
爽やかな笑顔で言われてまたドキッとしてしまう。
「おはようございます…」
「今から学校?早いね。」
「いや、隣に住んでる幼馴染を起こしに行かなきゃいけないんすよね。」
「あぁ、隣の彼ね!昨日挨拶しに行ったけど爽やかな子だったなあ」
聖夜を褒められて悪い気はしない…
「いやあ、毎日起こしに行かなきゃなんで大変すよ」
苦笑気味にいう。
「ははっ、仲いいんだねえ。」
「まあ…」
「今から仕事なんですか?」
今度は俺が聞いてみる。
「そうそう。学生のうちにいろいろ楽しんどきなねえ。社会人になるとそうもいかないからさ!」
愚痴を零しながらも嫌な感じを少しもださない太宰さんに、好感を覚える。
「っすよね。楽しみます。」
「えっと、翼くんだったよね?」
急な名前呼びにびびるが、悪い気はしなくむしろ嬉しかった。
「は、はい。透さん…でしたよね。」
「わあ、覚えててくれたんだあ。嬉しいなぁ」
にこにこと話す透さんは、ふわふわしていて可愛いなと俺は思う。
「てか翼くん、弁当2個も食べるなんて食べ盛りだなぁ!」
俺が手に持っている弁当箱を見て言う。
それを聞いてなんだか恥ずかしくなってきた俺は
「いやっこれは、隣の幼馴染…聖夜って言うんすけど、そいつに毎日作ってて、でも今日からは彼女に作って貰うらしくて、それで…」
自分で言いながら悲しくなってくる。
「間違えて作っちゃったのかあ!」
「はい。そうなんです…」
その時、俺は頭にいい案が浮かんだ。
「あっ、あの!良かったらでいいんですけど、俺の弁当をいりませんか?食べれる味ではあると思うし、でも、昼飯とか他にあったら全然断ってくれていいんすけど!」
「ええ?!」
(いや俺は急に何言ってんだよ!ほぼほぼ初対面のやつの弁当なんか誰が食べるかよ…)
やっちまったなと思っていると
「ほんとにいいの?昼ごはん、いつもコンビニですましてたから、手作り弁当とかすっごく嬉しいんだけど…」
意外な反応に思わず目をぱちぱちさせる。
「ほんとにもらってくれるんすか?自分から言い出しといてあれですけど俺達ほぼ初対面ですし…」
「ぜっんぜん!むしろありがたいよ!お代払いたいくらい!」
「それに…」
「それに?」
「なんか翼くん俺と同じ匂いする気がするんだよね」
俺も同じことを感じていたので驚いた。
「同じ匂いってどういう…」
聞こうとすると、透さんが時計を見て慌てだした。
「ごめん!!もう出なきゃ!!そのお話はまた今度ね!」
「あ!弁当!!」
俺が弁当を渡すと
「ホントにありがとう!ゆっくり頂くね!今日の夜弁当箱返しにいくからー!」
と、走りながらでていった。
(なんか嵐みたいな人だったな。)
しばらく透さんが走っていった方を見ながらぼーっとしていると、まだ幼馴染を起こしに行けてないことに気がついた。
「うわっやっべ!急がねえと!」
急いで合鍵で聖夜の家に入った。
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