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「聖夜ぁぁあおきろおおおお!!まじ今日やべえって!!!遅刻する!!」
いつものように石のように動かない聖夜を死にものぐるいで揺する。
「んん…むりいい。あと30分寝かせて…」
「だあかあら!!今日はほんとにやべえんだっての!!!」
こうなったら最終手段だ。かぶってる布団を奪い取る。
「ぁあああ!さぶいいいい!!」
「さっさと起きろ!ばか聖夜!!」
「むりぃ… 今日は休も…翼… 一緒にここで寝ようよ…」
と腕を掴まれる。
「んなっっっ…」
思っても見たかった言葉に、動悸が激しくなる。
(そんなことみじんもおもってないくせに…)
「起きろよ…今日は優里ちゃんの弁当食うんだろ…」
本当はこんなこと言いたくなかったが、もうこれしか言葉が見つからなかった。
思った通り、聖夜が飛び起きる。
「あぁ!!そうだった!!!今日は行かなきゃ!優里が待ってる!」
(ほんとこいつは優里ちゃんのことになるとちょろいな。)
俺は呆れて深くため息をついた。
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キーンコーンカーンコーン
授業終了のチャイムが鳴った。弁当の時間だ。
俺はクラスで1番仲のいい、支倉に声をかけた。
支倉は、今年から同じクラスで席も近く、すぐ仲良くなった。明るくてたまに馬鹿なことをするがそんな所も面白くて一緒にいる。つまりはいいやつなのだ。
「なあ、支倉。昼飯一緒に食べてもいいか?」
「別にいいけど、あれ?真野は?お前いつも一緒に食べてんじゃん。」
「えーと… 聖夜は、これから彼女と食べることになってさ…」
「あー!あのめっちゃ可愛い子な!お似合いだってよくみんな噂してるわー」
支倉の何気ない言葉にぐさっとくる。
支倉は俺の気持ちをもちろん知らない。同性愛者だってことも。俺はそのことを誰にも言ったことがないし言うつもりもなかった。
「そうだな… だからこれからは仲間に入れてくれると嬉しい。」
「おう!全然いいぜ大歓迎だ!一緒に食べてる奴らみんな面白いからお前もきっとすぐ仲良くなるぜ。」
俺はほっとする。支倉のこういう誰でもウェルカムな感じがとても好きだった。
「まじさんきゅ。ちょっと心配だったんだよな。」
「まあお前ら、ほんとにずっと一緒にいるんだもんなー。付き合ってんのかと思ったぜ?」
「はっっ!なわけないだろ!!!あんなやつとか断固拒否だ!!」
つい大きい声を出してしまう。
「そんな嫌なのかよw 間に受けんなって、冗談だろ!」
と笑いながら支倉が言う。
(うぅ… 恋人とか夢のまた夢なんだよ…)
そのまま支倉の友人たちと昼ご飯を食べた。
初めての聖夜がいない昼の時間はなんだかやっぱり物足りなかった。
(聖夜も少しは俺がいなくて寂しいと思ってくれるかな…)
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帰りに職員室に呼ばれていたので、向かっていると聖夜が誰かと話している声が聞こえて足が止まる。相手は優里ちゃんのようだった。
(こんなとこで何話してんだ?)
そこはあまり人が寄り付かない屋上に登るための階段だった。
なんだかとてもその2人の前を通る気になれず、さっと階段からは見えないところに隠れてしまった。
俺はこんな所に隠れてないで、さっさと職員室に行けばよかったんだ。じゃなきゃあんなに傷つくことはなかったのに。
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