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あれから2週間。もう既に夏休みに突入していた。 「あっっぢいいいいい〜」 俺のうちは母子家庭であんまりお金の余裕がない。だから真夏はクーラーをつけずに扇風機一個でのりきるのだ。 「やっぱきっついな。クーラーつけてええええ」 でもつけたら母さんが鬼のように怒るのでがまんがまん。 夏休みにはいってから1週間がたつが、特に予定もなくなにもしていない。正直暇だ。聖夜はたぶん優里ちゃんとほぼ過ごしているし、楽しみにしている旅行もあれは夏休みの終わりごろだ。 「透さん… いまどこにいるかな」 メールでどこにいるか聞いてみる。透さんも最近は出かけているみたいであまり会えていない。 「俺って…こんな友達いなかったけっなーー」 自分で言ってみて凹む。去年の夏休みまでは聖夜と一緒に過ごしていた。部屋でゆっくり過ごしたり、聖夜は友達が多いので、そこに混ざったりと、今では考えられないほど俺の生活の中に聖夜がいた。 (そーいやー夏祭りも行ったなあ… 聖夜の浴衣まじかっこよかったなあ) 小さい頃から地元の夏祭りは毎年聖夜と行っていて、夏休みの楽しみでもあったのだ。 (まあ…今年はたぶん優里ちゃんと行くんだろうなあ…) いかんいかん、1人になるとどうしても嫌なことを考えてしまう。 ピンポーン 「ん?誰だ?宅急便か?」 ドアを開ける。 「つっばさくん!!!!」 そう言って抱きついてきたのは、 「透さん!!!」 「ど、どうしたんすか?!急に!」 「え〜?翼くんが俺に会いたいってメールしてきたんじゃーん。」 確かにメールはしたが、会いたいとはいってないはずだ。 「いや俺は、なにしてるかなーって聞いただけっすよ!」 「暇だったんでしょ?だから会いに来てあげたのにい… もっと嬉しそうにしなさーい!!」 そう言いながら透さんに、俺はほっぺをぐにーっと伸ばされる。 「いひゃいいひゃい、うれひいっすから!ほっぺのばすのやめれください!!」 「ふふふふ、しょうがないなぁ」 そう言って微笑んで俺を見る透さんの目はとても優しくて、俺はいつもドキドキしてしまう。 (でもなんか最近の透さん。めちゃくちゃ甘い雰囲気出てる気がするんだよな) なんか、透さんに見つめられるとむずむずしてくる… 「通っていいっすか…?」 聞いたことがある声がして、その方向を見ると 「せ、せいや…」 そこに居たのは、聖夜と優里ちゃんだった。 「近所迷惑なんで、いちゃいちゃすんならよそでやってくださいよ」 そう言われて、透さんと俺の距離がほぼゼロ距離だったことに気がつき、ばっと離れる。 「ご、ごめん…」 恥ずかしいのと辛いのとで聖夜の顔が見れない。 「ごめんね?じゃあ翼くん、中入ろうか?そちらも楽しんで♡」 そう背中を押されて家の中にはいった。 「ふぅ… やっぱ君の幼馴染くんこっわいわ」 「え… 聖夜っすか?」 今まで聖夜を怖いだなんていう人がいなかったから、普通に驚く。 「うん。俺を警戒してるってのもあるけど、俺と翼くんがくっついてるの見てめちゃめちゃ嫉妬してたよ。」 (嫉妬… してくれてたのか…? だったら嬉しいけど。) 「嬉しそうな顔しちゃって…」 「うぅ… でも今日あいつさっきの彼女とお泊まりっすよ、夏休みの間にするって言ってたんで… 」 「え。それ翼くんに言ってんの??まじノンケって無理だわー」 「しゃ、しゃーないすよ。俺はただの親友で幼馴染っすもん。」 「ただの幼馴染ねぇ… 」 自分で言ってて悲しくなってくる。今日あいつは一線を越すんだ。 「翼くん… 隣でその大好きな幼馴染が愛しの彼女と、ヤることやってんのかもしんないのに耐えられるの?」 「っっっ!」 久しぶりに意地悪を言ってくる透さんをきっと睨む。 「耐え、られ、ますよ…」 「うそ。そんな泣きそうな顔してたら説得力ないよ…」 「ぐっぅ、なんでっそんな意地悪言うんすか… 」 こらえていた涙が溢れてくる。 「しょうがないじゃないすかぁっ、俺にはどうにもできないっ!俺だってつらいけどっ、あいつには幸せになってほしいんすよ…」 完全に八つ当たりだ。かっこ悪い。なんか透さんにはやっぱり泣いてるとこばっか見せてる気がする。 「ごめん… 翼くんが幼馴染くんのこと健気に好きすぎるからやきもちやいちゃった。もっと俺に頼ってくれてもいいのにって思って。」 「へ…?」 「俺、これでも翼くんのこと結構気に入ってるんだよ…?それに幼馴染くんのせいで何回も泣いてるとこ見てるってのに、あんなに好きなとこ見せられたらちょっとくらい嫉妬しても許してよね!」 初めて聞く透さんの本音に目をぱちぱちさせる。 「な、何か言ってよ… 俺、結構恥ずかしいこといったんだけど…」 「えっと… す、すみません?」 「なんで疑問系?笑」 「や、やきもちやかせて…」 「ふふふふふ、あははははは!!やっぱりおもしろいねぇつばさくん!!あはははは、別に謝ることないのに」 そう言って大爆笑する透さんの姿に少しだけ安心する。 「俺、結構頼ってますよ?こんな情けないとこ見せるの透さんだけっす…」 「そっかあ… じゃあ、これからも泣きたくなったらいつでも俺のとこ来ていいよ。」 「な、なんでそんなに俺に良くしてくれるんすか… 」 「うーん。なんでだろう… 翼くん見てると、昔の知り合い思い出すからかなー?」 「へえー。どんな知り合いっすか?」 「知りたいの?」 「まあ… 透さんの交友関係のか全く謎なんで、知りたいとこではあります。」 「いいよ、今度話してあげる。俺の初恋の人の話。」 「え、今話してくれないんすか?」 「それは、今からする提案に翼くんが乗ってくれたらによるかな!」 「提案?」 「翼くん、今日俺んち泊まりに来ない?」

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