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第60話

「俺…本当にここで寝るの?」 部屋の入口で涼真が枕を胸に抱え小首を傾げている。 …可愛い… アラサー男子とは思えない。 「真咲が一人寝したいって言ってるんだから今日はそうしてみればいいんじゃない?」 「…うん」 「今すぐじゃないけど、そのうち自立するんだしさ」 「…そっか…そうだよね」 言葉巧みにそう言えば、少し寂しそうに涼真が呟いた。 「それじゃ、お邪魔しま〜す」 「おう」 普通に返事なんてしてるが心臓が口から飛び出るんじゃないかって程、俺は…緊張してる…。 ベッドのサイズはもちろんダブル。 背の高い俺の為に優羽のダンナ様、貴志さんが選んでくれた。 ありがとう…お陰で涼真と同衾出来ます…。 胸の前で両手を組み、チラッと涼真を見れば俺の枕の隣りに自分のそれを並べ、ポンポンと撫で付ける。 それから俺の顔を見ないでコロンと横になって、じっと息を潜めていた…。 …あぁ、涼真も緊張してんのか。 「俺も寝よっと。涼真、おやすみ」 縮こまる肩に手を置き首筋に唇を押し当てた。 「…ん、ちょっと!どこ触ってんの!」 「どこって…ここ」 柔らかな首筋を舌で触る。 「…あ…ン、くすぐったい…」 どさくさに紛れて後ろから抱き締め、涼真の髪に鼻をくっ付けた。 「い…郁弥…苦しいよ」 「色々もう…ダメ…キスしても…いい?」 「…」 返事は無かったが小さく頷いた涼真。 俺は身体を起こして涼真の上に覆いかぶさって…ゆっくりと顔を近づけていった。

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