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第59話
「…それでね、なっちゃんがシールを舞ちゃんにあげてね、そしたら翔ちゃんが泣いちゃったから僕が翔ちゃんにシールあげたの」
テーブルで牛乳を飲みながら翔にもらったという堅焼き煎餅を齧って今日の報告をする真咲。
「真咲はえらいね。大切なシール、翔にあげたんだ」
「いいの。僕、翔ちゃんの事好きだから」
バリバリと煎餅を齧る音が心地よい。
乳歯のせいか頭蓋骨の大きさのせいか、子供が煎餅を齧る音は大人のそれとは音が違う気がする。
優羽は三年前に双子を産み夏羽に弟と妹がいっぺんに出来た。
俺達がそうだったように、兄弟のいない真咲は夏羽、舞、翔と兄弟のように仲良くしてもらっている。
「一緒におやつ食べたら舞ちゃんがお眠になっちゃってね、だから翔ちゃんからお煎餅もらって帰ってきたの」
三歳児のお昼寝の邪魔をしないように帰ってきた真咲はすっかりお兄ちゃんの顔をしていた。
「真咲…兄弟欲しかったよな…ゴメン」
「僕にはパパと ととがいるからいいよ」
「真咲、今日は俺と一緒に寝ような!」
「え〜、僕お兄ちゃんだから一人で寝れるよ!ととはパパと一緒に寝てあげて!」
…ドキン!
まさか見透かされたように真咲から涼真と同衾の許可が出るとは!
思わず涼真と顔を見合わせ、二人で笑ってしまった。
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