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第88話

入学式から二ヶ月、心配はしていなかったが真咲の新生活は特に何の問題もなく送れているようだ。 真咲が選んだ部活は水泳部。 理由は…特に大きな大会には出場しない部だから、だそうだ。 好きに自由に泳ぐだけ…ま、それもいいんじゃない? 俺も泳ぐのは好きだし、気持ちは理解出来る。 今は筋トレが主だがそろそろ泳げるようになるし、泳ぎ始めたら大会なんかも意識するかもしれないし。 とにかく真咲は手のかからないしっかりとした子。 真咲が俺を本当に必要とする時が来るまで、…でもそんな日は来ない気もするが…俺は静かに真咲の近くにいたい。 そして中間テストも先週終わり、今日から真咲は二泊三日の校外研修。 集合場所は学校近くの幹線道路沿い。 俺は真咲の荷物を持ってバスまで見送る気でいた。 「郁弥は俺とここまで。真咲、気をつけて行ってらっしゃい」 「…やっぱ集合場所まで送るって!」 「過保護!」 移動教室ってやつで八ヶ岳辺りに行くらしい。 親元を離れた集団行動、ハイキング、あとは…クラスメイトとの親睦を深めたりするんだろう。 「行ってきます」 大きなリュックを背負ったジャージ姿で早朝家を出ていった。 「寂しいな」 「俺がいるじゃん」 「…うん」 「こんな日位…郁弥の事、甘やかしてやるよ」 …ドキン… 真咲に向けるものとは別の…俺にだけ見せるはにかんだ笑顔。 「…いっぱい…甘えさせて…」 涼真の耳元で囁き、耳朶を柔く噛んだ。

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