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第87話

「揃ってのお帰りかよ」 玄関で涼真が嬉しそうに俺たちを出迎えてくれた。 「焼かない焼かない」 「父さん。偶然だから、ね」 男三人でぞろぞろとリビングに移動し、早速涼真はテレビをつけた。 「郁弥、今日の入学式の!見てよ!」 「うおお!サンキュ!」 テレビモニターに映し出される写真。 涼真は俺が帰ったらすぐにでも見られるように準備万端整えてくれていた。 カメラ目線の真咲はちょっと不貞腐れたように見えたが枚数が進むにつれてその表情は優しく変わっていった。 時々、苦しいのか襟を緩めるような仕草をする。 真咲の通う学校はレトロな詰め襟の学生服なんだぜ? 「ウチの子が一番カッコイイ!」 「とと、恥ずかしから…外では言わないでよ」 「もちろん(言う)」 「郁弥、ウチの子って…」 「違わないだろ?」 「…うん」 ヤバい…涼真が涙ぐんでいる。 「…僕、勉強してくる」 「え?まだ授業始まってないのに?」 「教科書は貰ったから」 涼真の心の内を知ってか知らずか、真咲はそう言ってパタンと静かにドアを閉めてリビングから出ていった。 自分の写真見てもしょうがないし、…涼真も泣いちゃってるし。 ソファーに座る俺のすぐ横に座り、僅かだが肩を震わせている。 「ほら、ティッシュ。一緒に見よう」 「…ん、ありがと…」 真咲の晴れ姿を涼真と二人で最後までみた。 「卒業式は絶対に、行く!」 「無理しなくていいよ」 「いや、次こそは!」 三年後は俺は涼真と二人で真咲の卒業式に出席したい、そう強く思った。

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