90 / 322

第90話

「二人だからな、簡単な物でいいよな」 誰に言うでもなく、一人でいるのに口に出す。 卵、ザーサイ、キクラゲをピリ辛で炒めれば酒のアテには申し分ない。 ご飯のオカズにだってなる。 後はキャベツの千切りにミニトマト、豚肉を塩と胡椒で焼けばオッケー。 「味噌汁忘れてた。豆腐でいっか」 パパッと手早く仕上げてテーブルに運んで…おっと、グラス! 「今日はちょっとだけ…」 …涼真と、大人時間。 ディナーと言うほどのものではないが、涼真と二人ならこれでいいだろう。 「あとは…」 寝室を整えたり風呂を準備したりと…下心が見え見え…。 「これ、どうしようか。とりあえず置いとこうか…うーん…」 決めかねていると玄関から金属音がした。 「涼真帰ってきた」 玄関にで迎えればそこに愛しい人。 「おかえり」 「郁弥、ただいま」 涼真の目が俺だけを見る。 …ああ、コレ…凄くドキドキする。 「りょ…うま、晩飯食べるだろ?もう、出来て…」 「郁弥…」 「…」 靴を脱ぐなり胸にもたれかかる体温。 鼻を擽る涼真の匂い。 「俺を甘えさせてくれるんじゃなかった?」 「…そんな事…言ったな…」 「はは…先は長いんだから、とりあえず飯食っちゃおうよ」 「うん」 強く抱き締めてキスしたかったけど…ちょっとだけ我慢。 夜はこれからだから…。

ともだちにシェアしよう!