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王子さまとの出会い

「無視したら?」 「へ?」 「たもくんが言っていたでしょう。ヤバイ奴だって。もしそうだとしたら、体目当てかも知れないし。ほっとくのが一番。また傷付くのは四季だよ。そうでしょう?」 心の奥底にしまったはずの忌まわしい記憶が脳裏をすっと過った。 その瞬間、寒くもないのに足がかたかたと震え出した。 「世の中、みんながみんな優しい人ばかりじゃない。悪い大人だっている。それは四季だって嫌なくらい分かってるでしょう。諦めてそのうち帰るよ。さぁ、仕事!仕事!長谷川先輩も、ほら仕事に戻ってください。ただでさえ納期が遅れているんですから」 きよちゃんに言われその日出荷する分の伝票をチェックするために急いで事務室に戻った。 仕事がようやく終わったが夕方6時過ぎ。 さすがに2時間近くも待っていないだろうと思ったけど、考えが甘かった。 長い足を組み白い車に寄り掛かり片手でスマホを操作する姿はとても絵になっていた。 優雅で華やかな彼はとにかくよく目立つ。 だからみんな振り返ってチラチラと見ていた。当の本人は見られていることに気付いていないみたいだった。 「四季」 目が合うなり声を掛けられた。 そして破顔すると、 「お帰り」 と、目を輝かせ僕を見つめ返してきた。 やっぱり彼は王子様だ。 そうじゃなかったら、こんなにも心臓がドキドキしないもの。 微笑み返すと、嬉しそうな笑みで大きく頷き、僕の方へと駆け寄ってくれた。

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