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彼の秘書

「メニューはお任せで大丈夫?嫌いな食べ物やアレルギーで食べれない物はある?」 「好き嫌いはありません。何でも食べれます」 「そう良かった」 和真さんのお姉さんが鼻唄を口ずさみながら足取りも軽く厨房へと向かった。 テーブルの上に置いてあったメニューを何気に手に取り眺めた。 「え?カフェオレが600円もするの」 思わず声に出してしまい慌てて口元を手で覆った。視線を感じおっかなびっくり顔を上げると、和真さんのお姉さんのご主人がぷぷっと笑っていた。 「ごめんなさい」 恥かしくて身の置き場に困り下を向いた。 「和真は秘書の副島以外、同僚も友達も誰一人ここに連れて来たことがないのよ。あなたが初めてなのよ。だからテンションが上がっちゃって」 和真さんのお姉さんが温かいカフェオレを運んで来てくれた。 「副島に会った?あの上から目線かなりムカつくでしょう。人を馬鹿にするか、けなすかのどっちなんだもの。言い方もきついし……和真に言えない時は私に相談していいからね。和真の大事な友達は私にとっても大事な友達だから」 「はい、ありがとうございます」和真さんのお姉さんの優しさが涙が出るくらい嬉しかった。 「あの……」 思いきって聞いてみる事にした。 「和真さんの好きな食べ物って何ですか?」 「真剣な顔で何を言うかと思ったら……あの子は出されたものは残さず綺麗に食べるのよ。好き嫌いはほとんどないんじゃないのかな?普段は外食やコンビニの弁当ばかりだから、たまにはここに来てご飯を食べるように言ってるのよ。豪勢なご馳走を作る必要はないの。家庭的な料理でじゅうぶん。四季くん、和真の胃袋を掴むのはそんなに難しい事じゃないから、頑張って。応援してるわ」 手を両手で握られぶんぶんと大きく振られた。 「俺も応援してる。頑張れ」 厨房からも声が飛んできた。

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