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ただいま、駆け落ち中(仮)
「和真さん」
すぐに戻ってきた彼におそるおそる声を掛けた。
「副島は俺らの味方だ。大丈夫だ」
にっこりと微笑むと宥めるように頭を撫でてくれた。
「抱っこしたとき、重くないのかなって……あ、四季の体重が、じゃないよ」
あたふたしながら言葉を継いだ。
「一日中座っているのも大変だと思うんだ。俺だったら脱ぎ履きが楽な、なるべく軽いスニーカーを選ぶ。厚底でしかもずしりと重い靴は選ばない。実際、靴を脱がせるも一苦労で大変だったんだよ。雄士さんに靴に盗聴器を仕掛けるのは可能かと聞いたら、出来ないことはない、そう答えが返ってきた。でも俺より先に副島はその事に気付いていた」
「え?」
思いもよらないことに動揺し声が震えた。てっきり嫌われているとばかり思っていたら尚更だ。
「ご近所さんたちが待ってるから、続きはあとにしよう」
彼に車椅子を押してもらいお爺ちゃんたちがいるリビングに一緒に戻った。
お婆ちゃんが真心を込めて作ってくれたご馳走とご近所さんが持ち寄ってくれた漬物や煮物などがテーブルの上に所狭しと並べられてあった。
「お腹空いたでしょう。遠慮しなくていいからね。どんどん食べて」
「ありがとうございます」
頭をペコリと下げた。
「なんでもいい?」
「はい」
テーブルの上がよく見えなくて腰を浮かし背中を伸ばしたら、彼がクスリと笑いながら料理を小皿に取り分けてくれた。
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