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温かな人たちに救われる心

「和真、あまり口喧しく言いたくないんだが、ひとつだけ約束してほしい。四季は、心の傷がまだ癒えていない。だから四季の気持ちを最優先に考えてほしい。イチャイチャするなとは言わないが、傷付くのは四季の方だ。和真、さっさと鍵を開けてくれ」 「あぁ、そうだった」 てっきり怒られると覚悟していたけど……。 「部屋に入ったら髪をちゃんと乾かしてやらないと四季が風邪ひくだろう?上に何か着せないと湯冷めするだろう」 こんなに副島さんって心配性だったけ? いつも僕には素っ気なく振る舞うか、冷たく接するのに。まるで別人のようだ。 「鍵は?」 「あっ、ご、ごめんない。僕が持ってます」 手に握り締めていた鍵を副島さんに渡した。 「和真、四季を落としたらただじゃおかないからな」 「俺が落とす訳がないだろう」 「ふたりとも声を押さえて」 宿泊客は僕たちだけじゃない。 大広間の宴会はまだ続いているけど、うるさくして女将さんに迷惑を掛けるわけにはいかないもの。 「四季の言う通りだ」 「悪かった」 和真さんが窓の近くに置いてある椅子に座らせてくれて、すぐに半纏を持ってきてくれた。 副島さんは手に握り締めていたレジ袋をテーブルの上にどかっと置くと、ファンヒーターのスイッチを入れてくれて、バスタオルを肩に掛けてくれた。

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