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温かな人たちに救われる心
「これを読め」
副島さんがレジ袋から茶封筒を取り出し、それを彼に渡した。
「障子に目あり壁に耳ありだ。誰が聞き耳を立てているか分からない」
副島さんが背後にすっと立つと、濡れたままだった拭きはじめた。
「自分で出来ますから」
慌てて首を振った。
「和真は俺には焼きもちを妬かない。大人しく座ってろ」
ぶっきらぼうな言い方だけど、その手付きはとても優しいものだった。
「副島、これって……」
一通り目を通したあと、彼が信じられないとばかりに声を上げた。
「雄士さんからも興味深い話しが聞けた。ほぼ間違いない」
彼が傍らに座り込むと、その紙を見せてくれた。
そこにはににわかには信じることが出来ないことが書かれてあった。
「#(ハッシュタグ)を付けても付けなくても、しらさぎが丘、養護施設でネットに書き込むと速攻で削除される。アカウントが凍結される。警告を受け二度とそのSNSは使えなくなる。そのことを吉村は5年前から把握していた」
「……嘘……そんな……」
口元を両手で覆い首を横に振った。
5年前ってことは、僕が13歳のときだ。何か変だって思ったこと……それまでと変わったこと……
「あっ……」
あることを思い出した。
「四季どうした?」
「四季?」
「和真さん、副島さん…」
どうしていいのか分からなくて。
ふたりを交互に見上げた。
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