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複雑に絡み合う想い
ちゃぷんとお湯が跳ねた。
「橋本さんも逮捕して欲しいと副島が何度も警察に頼んだんだが、その必要はないと門前払いされた。先に逮捕された久保木が自分と初瀬川が主犯。彼女は関係ないと言い張ったからだ。副島は諦めず食い下がった。根負けした刑事が、橋本さんに事情を聞くために入院先の病院に向かったらベットはすでにもぬけの殻になっていた」
そこで言葉を止めると後ろから回っていた腕にぎゅっと力が入った。
「もしかして誰か亡くなったの?」
聞くのも怖かったけど、ちゃんと現実に向き合わなきゃ。逃げちゃ駄目。そう自分に何度も言い聞かせ恐る恐る聞き返した。
「女性の格好をさせられた男が床に倒れていたそうだ。頭を鈍器みたいなもので殴られ意識不明の重体だ。顔は焼け爛れ身元を証明するものは何ひとつ持っていなかったそうだ」
「きよちゃんが犯人なの?」
「さぁ、どうかな。断定は出来ないけど状況からしてほぼ間違いないだろうって」
「これ以上罪を重ねないで欲しいのに……」
上唇を噛み締め、がっしりした胸に凭れかかり彼を見上げると、
「俺も同じ想いだ」
ひそりと睦言のように吹き込まれた。
「ん」
耳がくすぐったくて首を竦めると、クスクスと愉しげに笑われた。
「相変わらず感じやすいね」
「だって和真さんが……っん……っ」
言い返そうとした直後、そっと口付けられた。
啄むような口付けが何度も唇に触れる。微かな声を溢すと、次第に口付けは深く、甘くなっていった。
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