282 / 588

複雑に絡み合う想い

「施設のホームページやSNSを確認したら、円谷園長とこの女性が一緒に写っている写真や動画が多数あった。妻とは数えるくらいしかないのに。彼女は一体何者なんだ?」 「橋本さんと同じ隠し子か、もしくは愛人か」 「もし愛人ならあの嫉妬深い橋本さんが黙ってはいないだろう」 気難しい表情を浮かべ膝を付き合わせ話し込む三人。 そのとき女性スタッフが飲み物を運んできてくれた。 「あれ?この人……」 女性スタッフが画面に写る園長先生と紗千香さんを見て驚いたような声を上げた。 「もしかしてお知り合いですか?」 彼が声を掛けた。すると、他人の空似かも知れませんがと前置きした上で、中学校のときの同級生に紗千香さんが瓜二つであることを話してくれた。 「結婚してI市に引っ越す前は私もK市に住んでいたんです。彼女は父子家庭でお母さんはいなかったと思います。名前は武田梨花(たけだりか)です」 「お仕事中なのに引き留めてすみませんでした」 「いいえ私の方こそお役に立てなくてすみません」 女性スタッフが頭を下げるとそそくさとカウンターに戻って行った。 「武田梨花か……よしあとは任せろ」 吉村さんがシャツを腕捲りすると目にも留まらない速さで何やら検索をはじめた。 「あの、間違っていたらごめんなさい。紗千香さんってもしかしてきよちゃんのお姉さんっていう可能性はないですか?お母さんの死の真相を知り、きよちゃんと園長先生を脅した。でもそんな訳ないか」 「いや、充分あり得る」 吉村さんが何かを見付けたみたいだった。

ともだちにシェアしよう!