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深まる謎

胸を撃たれた佐瀬さんはすぐに病院へと緊急搬送された。 「石垣は虎視眈々と佐瀬の命を狙い、綿密に殺害計画を立てていたみたいだ。命に別状はないが重傷だ。佐瀬が亡くなれば真相は闇のなかだ。お天道様はちゃんと見ているんだな。そう易々と死なせやしない。ちゃんと真相を白日のもとにさらしちゃんと罪を償えと言っているのも知れないな」 戻ってきた城さんがそんな話しをしてくれた。 「征之さん以外、ここにいる全員が2年前にどんな事件があったのかよく理解出来ていません。城さん、教えてください」 「分かったよ。その前に旨いコーヒーを一杯だけ飲ませてくれ」 城さんがちらっと櫂さんに視線を向けた。 「インスタントでも良ければご馳走しますよ」 「インスタントで十分だ」 「分かりました。少しお待ちください」 櫂さんがすっと椅子から立ち上がると台所に向かった。 年明け早々、吉村が岩沢の遺族の代理人として9年前の事件を告発し、佐瀬らを相手取り訴えを起こした。 4月、3月から行方不明になっていたしらさぎ丘養護施設の事務職員の高橋の遺体が施設の近くを流れる川の下流から発見された。 6月、台風による水害のニュースの陰にふたつの事件が立て続けに起こった。それは9年前の火事は橋本による放火殺人だとして遺族が橋本や円谷に対し損害賠償を求め提訴しようとしていたが、誰かがそれを握り潰した。同じ頃、岩沢の遺族が行方不明になった。8月に四季くんの冤罪事件が起きた

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