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悲しい再会

5083。阿部さん立ち会いのもと、彼が間違えないように暗証番号を入力すると、かちっと微かに音がした。 「開いた。四季、大丈夫か?」 砂利に車輪がとられ一向に前に進まず苦労をしていたら、それに気が付いた彼が飛んできてくれた。 「ありがとう」笑顔でお礼を言ったら、 「だからいちいち礼はいらないって」 恥ずかしいのかな?わざとらしく咳払いをすると車椅子をゆっくりと押してくれた。 何が入っているのか、ドキドキしながらそっとふたりを見守った。 中は半畳ほどの広さ。段ボールが3つと、持ち手が付いた大きなグレーの箱が一つ、段ボールの上にちょっこんと乗っていた。 警戒しながら彼がその箱を開けた。 「オーダーメイドで仕立てたスーツみたいだ」 その言葉にすっかり忘れていたあることを思い出した。 「面接のときも入社式のときもスーツは先輩のを借りたんです。園を卒業する日の前日、まなみ先生にスーツ一着だけは持っていた方がいいよって言われて寸法を測ってもらったんです。たもくんときよちゃんの結婚式に間に合えばいいねってまなみ先生と話しをしていたんです」 思いがけないプレゼントに感極まり涙が溢れそうになった。 段ボールの中には園で保管していたアルバムや通信簿、賞状、入学式や卒業式、運動会、発表会などを映した沢山のDVDがぎゅうぎゅうに詰め込まれてあった。

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