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はじめての家族旅行
「舅と姑と上手くいかない、価値観や金銭感覚の違いから美登里とも上手くいかなくて、だから、外に愛人を作った。私の母も和真の母もあの人に騙されたようなもの。男を見る目がなかったって、母はよく泣いていたわ。妻とは離婚するから結婚してくれ、愛しているのは君だけだ。甘い言葉で囁いて、子どもが出来たと分かるなり態度が一変した。お爺ちゃんが私と和真の母親を連れてオークポリマーの本社に乗り込んだのは和真が産まれてすぐのことよ。社員の前で、私と和真の母親に土下座させ、認知届を書かせ、慰謝料、養育費を支払うことを認めさせた。まさかそのとき、長男がその場にいるとはね」
雀の涙くらいしか慰謝料は払ってもらえず、養育費が支払われたのはわずか一年あまり。彼や結お姉さんのお母さんの苦労を思うと、胸が張り裂けそうになった。
「父親に別の家庭があると知った長男は、親に愛情を注いでもらいたくて、自分がだめだと思っている部分を埋め合わせようと完璧主義者になった。学業優秀、スポーツ万能、絵に描いたような優等生になった」
結お姉さんがスマホを操作し一枚の写真を見せてくれた。
家族写真かな?
真ん中にたもくんと同い年くらいの男の人がふたり、S高校の制服を着た女の子がひとり。あれ、どこかで見掛けたような……。
「あ、この子」
「知ってる子?」
「S高校の生徒さんが毎年夏休みにボランティアとして園に来てくれるんです。盆踊りのとき、わたあめを作っていた子に似てるかも」
「よく覚えてるね」
「清楚で上品な感じがする子で、僕は全然分からないけど、着ているものがブランド品だったみたいでみんな金持ちのお嬢様だって噂をしていたんです」
「そうなんだ」
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