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はじめての家族旅行
「いや、それだけは勘弁してください」
彼が慌てて耳を手で覆うとしたけど、
「和真行くぞ」
コオお兄ちゃんと櫂さんに手を掴まれあっという間に大浴場に連れていかれてしまった。呆気にとられていたら、結お姉さんの笑い声が聞こえてきた。
「大丈夫?口が開きっぱなしになってるよ」
「え?あ、あの……ごめんなさい」
エヘヘと笑って誤魔化した。
「三人であぁやって、いっつもいちゃついてるのよ。和真、いじられキャラでしょう。だから、ふたりに可愛がってもらってるの。
それよりもなんか暑くない?副島が戻ってきたらアイスでも食べない?会津山塩ジェラートが売店で売ってるみたいだよ」
テーブルの上に置いてある売店と食堂のに目を通す結お姉さん。
さっき、話しそびれたから。そう言って、彼の家族についてぽつりぽつりと話しはじめた。
「あの人じゃないよね、親に向かって……。
大学卒業後オークポリマーに就職して、社長秘書をしていたとき、一人娘だった美登里 に見初められて、26歳のとき出会ってわずか2ヶ月でスピード結婚した。美登里はあの人より5歳年上。朝宮家に婿養子に入った。すぐに長男も生まれてはたから見たら誰もが羨む幸せな家庭だった」
だったってことはその幸せは表向きのことで、実際には違うってことだ。
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