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はじめての家族旅行

駅から少しはなれた国道沿いにスーパー銭湯の大きな建物が建っていた。休日ということもあり駐車場はいっぱいだったけど、身障者用の駐車スペースは2台分空いていた。 「個室ありって書いてあったんだけど、情報が古かったみたいだ」 「仕切りがあるから大丈夫だよ」 結お姉さんがお腹を擦りながら座布団の上に静かに腰を下ろした。 車椅子を邪魔にならないところに置き、彼に横に抱っこしてもらい結お姉さんの隣に下ろしてもらった。 「こはるちゃんだっけ?一重の目蓋は見れば見るほど父親とあの人そっくりで、憎たらしくて腹が立った」 鼻筋に皺を寄せ口をゆがめる結お姉さん。ハンカチをぎゅっときつく握りしめた。 「可愛い息子が帰ってきてさぞかし大喜びだろうよ」 櫂さんも不愉快そうな表情を浮かべた。 「絶対、誰かが仕組んだ。そうとしか思えない。大切な家族旅行なのに」 ぶつぶつ呟きながら彼が隣に腰を下ろした。 「城さんしかいない。あと誰がいるんだ」 コオお兄ちゃんもひどく腹を立てていた。 「折角銭湯に来たんだし3人でお風呂に入ろう」 「は?」 櫂さんの一言で一瞬静まり返った。 「このメンバーで一緒にお風呂に入るの一年振りくらいだよね。姉妹同士で積もる話しもあると思うんだ」 「何かあったらどうするんだ?」 「どうせ副島はカラスの行水だろ?」 櫂さんがくすっと笑った。 「僕は和真くんにちょっとだけ話しがあるんだ。副島、ふたりを頼むよ」 「そういうことなら分かったよ」 「ありがとう。じゃあ、行こうか。和真くん、そんなに嫌そうな顔をしてるんだったら耳を引っ張るよ」

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