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はじめての家族旅行
「さすが地獄耳」
「たまたま聞こえただけだ。四季、一口だけもらってもいいか?」
「はい」
「四季くん、せっかくだから食べさせてあげたら?」
「結、余計なことを言うな」
「あれれ、誰かな。俺だって四季に食べさせてもらいたいのに。和真ばっかりずるいって、駄々を捏ねていたのは」
「さぁ~~誰だろな」
コオお兄ちゃんが気まずそうに苦笑いを浮かべた。
アイスに添えられていたプラスチックのスプーンで一口分掬い、すっと差し出した。
「ほら、副島。なにを今さら遠慮してるのよ」
結お姉さんがコオお兄ちゃんの頬っぺを指先でツンツンとつついた。
「和真がいない今が妹に甘えるチャンスだよ」
「いちいち言われなくても分かってる」
恥ずかしそうに顔を赤らめるコオお兄ちゃんの口の中にスプーンをそっと運んだ。
「甘過ぎず、さっぱりして美味しい。溶ける前に食べた方がいい」
「はい」
「でな四季、物は相談なんだが」
コオお兄ちゃんが辺りをキョロキョロと見渡した。
「膝枕がしたい。無理にとは言わないが」
「え?えっと……その……」
胸がどきんとして、どう言葉を返していいか分からなくなってしまった。
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