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新たな事件のはじまり

帰宅した僕たちを待ち構えていたのは警察だった。 「朝宮さん、朝宮明日花さんの行方をご存知ですよね?署で詳しいお話しをお伺いしたいのですが」 ガレージに車を駐車し運転席から下りた彼を私服の警察官がぐるりと取り囲んだ。 「一度も会ったことがない女性の行方を私が知る訳ないでしょう。弁護士を通して頂けますか?」 彼は動揺することなく堂々としていた。 「和真」 異変に気付いたコオお兄ちゃんが駆けつけてくれて。トランクから車椅子を下ろしてくれた。 「構う必要はない。父さんが玄関のドアを開けて待ってる。家に入ろう」 「あぁ、分かった」 彼に抱っこしてもらい助手席から下ろしてもらうとそのまま玄関まで運んでもらった。背中にチクチクと刺さる眼差しが痛い。 「悪いことはしていないんだ。堂々としていればいいよ」 カタンと玄関のドアが閉まり、一息つく間もなく彼のスマホがまた鳴り出した。 「しつこいひとだ」 何度も繰り返し掛かってくる電話に彼がうんざりしため息をついていた。 「和真くん、私が代わりに出るよ」 「身内の揉め事に征之さんを巻き込む訳にはいきません」 「正確には身内じゃなくて、赤の他人だよ」 征之おじちゃんが彼の代わりに電話に出てくれた。 ー私の明日花ちゃんをどこにやったの?殺したいほど憎いからって、明日花ちゃんは関係ないでしょう。さっさと返してよ!明日花ちゃんに傷を一つでも付けたらただじゃ置かないわよ。聞こえているなら返事くらいしなさいよ。そっか、あの女も貴方も、母親が母親だものね。育ちが悪いのも納得だわー ものすごい剣幕で一方的に早口で捲し立てる女性。 彼や結お姉さんだけじゃなく、ふたりのお母さんまで侮辱するなんて。 彼は上唇を噛み締め反論せずじっと耐えていた。

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