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こはるちゃん、しーちゃんがいい
「朝宮さんと交際していると社内で噂になった女性をひとりずつ調べた。片手で指折り数えられるのは5までだろ?還暦手前だし若い子は誰も見向きしない。そんなにいないと鷹を括っていたが甘かった。子どもは親を選べないだろう。だから、和真や結が不憫でならない」
コオお兄ちゃんの表情が暗くかげりはじめた。
「病気、事故、理由がなんであろうと、親を失うことは辛いことだ。母親が亡くなったとき和真はまだ9歳だった。その悲しみもひとしおで喪失感も大きかったはずだ。あまりにも突然の死だったから尚更だろう。父親は生きていても、認知しただけで、養育費を払おうともしなかった。一宮さん夫婦が深い愛情を注ぎ和真と結を育ててきたから、和真も結も横道にそれることなく生きてこれた。愛情深いのも面倒見がいいのも世話好きなのも、あと、責任感が強いのも、一宮さん夫婦の背中を見て育ったからだろう。四季、和真にたっぷりの愛情を注いで、うんと愛してやってくれ。和真は親の愛情を知らずに育った。そんな俺が親になんてなれるのか、父親になってバチがあたらないかすごく悩んでいる」
「四季くんも親御さんを事故で亡くしている。出会うべくしてふたりは出会ったんだよ」
お爺ちゃんが敬老会の集まりから戻ってきた。
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