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こはるちゃん、しーちゃんがいい
「儂たちはただ、ふたりが親無し子と後ろ指を指され、辛い思いをさせたくなかっただけだ」
お爺ちゃんが優しく笑んだ。
「俺がどうしたって」
ちょうどそこに彼が帰ってきた。
「お帰りなさい」
「思ったより早く仕事が終わったんだ。お弁当ありがとう。美味しかったよ。明日もお願いいたします」
「はい」
笑顔でお弁当袋を渡され嬉しくて自然と笑みが溢れた。
「しーちゃん、おしっこ」
お昼寝していたこはるちゃんが目を擦りながら起きてきた。
「おいで心春」
彼がこはるちゃんを脇に抱っこし、急いでトイレに連れていってくれた。
「へぇ~~和真が焼きもちを妬かずちゃんとパパしてる」
これにはコオお兄ちゃんが驚いていた。
「明日花は唯人の知人男性らと一緒にいるかも知れない。その男は宇賀神組の関係者でオルコスの運営会社の実質的経営者だ」
「そうか」
「こうなったら、結に頼んでヤスだっけ?彼に頼むしかないだろう。相手はヤクザだ。俺たちが束になっても敵う相手じゃない。どうした和真?」
腕を前で組みなにやら考え込んだ彼にコオお兄ちゃんが心配そうに声を掛けた。
「なにか腑に落ちないことでもあるのか?」
「なんで無関係な妹を巻き込んだのかなって……そんなに俺が憎ければ正々堂々と来ればいいのに」
彼が哀しげな眼差しでポツンと呟いた。
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