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絶望の先にあるものは
「副島もうちょい左に寄れないか?」
「これ以上は無理だ。布団から落ちる」
「四季がサンドイッチの具みたくなってるんだ。可哀想だろう」
「四季のサンドイッチか。それはそれで旨そうだな」
「は?」
彼とコオお兄ちゃんの間に挟まれ動くことも、寝返りを打つことも出来なかった。
「窮屈だろう、大丈夫?」
「このくらい平気だよ」
「暑苦しいだろう?」
「ううん、大丈夫。すごく温かくて心地いい」
「痩せ我慢するな」
彼が苦笑いしながら布団をそっとかけ直してくれた。
「そういえば斎藤から聞いたか?」
コオお兄ちゃんの二の腕が腰に回ってきてそのままぎゅっ、と軽く抱き締められた。
「おぃ、副島。どさくさに紛れて何をしてるんだ?」
「何って久し振りに再会した妹に甘えているだけだ。悪いか?」
悪びれる様子もなくにやりと笑うコオお兄ちゃん。
「和真さんとコオお兄ちゃんって、本当の兄弟みたいで面白い。見てて飽きない」
「誰がこんな奴と………」
ふたりの声が見事にハモった。ほら、やっぱり仲良しだ。
「副島、斎藤がなんだって?」
「どっちかといえば和真と四季には朗報かもな。心春にとってはかなり辛いかもな」
「もしかして………保釈金を払い釈放されることなったとか……」
彼の声が動揺し震えていた。
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