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絶望の先にあるものは
「宇賀神組の真山の愛人 が産まれたばかりの赤ん坊を連れて姿をくらました。赤ん坊は宇賀神組の事務所近くの病院の前に置き去りにされてあった」
「これだけ必死になって探しているということは、橋本さんは赤ん坊の他に何かを持ち出した、ということですよね?」
「察しがいいな。真山のへそくりの他にまぁ、色々とな」
ヤスさんの歯切れが急に悪くなった。
「赤ん坊は今どこに?誰が面倒をみているんですか?」
「そりゃあ父親の真山が面倒みてる」
「そうですか」
言葉を濁した彼にヤスさんがぴんときた。
「真山は女癖が悪い上にヤクネタだ。それがどうした。赤ん坊が生まれたとたん、人が変わったように大人しくなっちまった。真山は、赤ん坊に聡太 って名付け可愛がっているっていう話しだが、そうかなるほどな」
ヤスさんが腕を前で組みなにやら考え込んだ。そこへ、
「どうせ物騒なモノを持ち出したんだろう」
お爺ちゃんがリビングに入ってきた。
「物騒なモノ?」
「宇賀神組は楮山組の直参の組だ。改造拳銃や危険ドラックを密輸し売り捌いているって噂だ。橋本さんは真山っていうヤクザが隠し持っていた拳銃を持ち出したのかも知れないな」
「その真山っていうヤクザは橋本の正体を知ったうえで匿っていたんだろう?」
「ごめん。俺、男女間のことはよく分からない。というか、四季以外のひとには一切興味がない」
「和真は四季一途だもんな。聞いたのが間違いだったな」
コオお兄ちゃんが苦笑いを浮かべた
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