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絶望の先にあるものは

ピンポンピンポンと何十回もチャイムを鳴らされ、ドンドンと何回もドアを足で蹴られた。 「随分とまぁ早起きだな。和真、副島、相手はヤクザだ。関わらない方がいい」 「でもお爺ちゃん」 「心配するな。知り合いを呼んだ」 目に涙を浮かべガタガタと震えているこはるちゃんをぎゅっと抱き締め宥めていたら、 「怖がらなくてもいいぞ」 不安を一掃するかのような笑顔でこはるちゃんの頭をぽんぽんと撫でてくれた。 「やけに静かだと思わないか?」 「さっきまであんなに喧しかったのに、急にどうしたんだろう」 彼とコオお兄ちゃんがそんな会話をしていたら、お爺ちゃんがお客さんを連れてきた。 「あれ?ヤスさん?」 「元気そうで良かった」 「先日は妻が危ないところを助けていただき、ありがとうございます」 彼がムッとしながらヤスさんの前にすっと出た。 「朝宮さんはゆきうさぎ丸のお得意さんですからね。客を守るのは店長として当たり前です」 ヤスさんがオヤジやカシラみていだな、ボソッと一人言を呟いたような気がした。聞き慣れない言葉にきょとんとして首を傾げていたら、クスクスと笑われてしまった。

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