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決着のとき

「助けてやりたいのは山々なんだが、生憎中国語を話せるのがここにはいない。ヤツは飼い主の言うことしか聞かない。飼い主に旦那が迎えに来るまで四季を守れ。何があっても離すな。そう言われてきたんだろう。まぁ、大人しくそこにいた方が安全だ」 「腕とか腰とか疲れませんか?いくら若いとはいえ無理しない方がいいと思いますが」 黒田さんが助け船を出してくれた。 「丸一日中飼い主を横抱きしていてもヤツは疲れない。顔を見てみ。嫌がってないだろう。むしろ喜んでいる。ごつごつした四十過ぎの身体もいいけど、たまにはぬいぐるみみたいな可愛い子を抱っこするのも悪くないってな」 「ヤスさん、もしかして言葉分かるんですか?」 「いや、分からない。当てずっぽうだ」 ヤスさんがにやっと悪戯っぽい笑みを浮かべた。 熊倉さんはカウンター席に座りぼんやりと遠くを眺めていた。黒服の男にガムテープを外してもらったみたいでナイフはもう握っていない。背後に監視役の男がふたり仁王立ちしていた。熊倉さんに話し掛けたくても、近付くことすら出来なかった。

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