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あなたたちだけ幸せになるなんて絶対に許さない
鬼気迫るヤスさんの迫力に女性は一瞬たじろいだものの、ライターオイルをぶちまけるととキャンドルスタンドを投げ入れた。
「四季くんだめ」
火は怖いけど、彼とコオお兄ちゃんとヤスさんを失いたくはなかった。みんなかけがえのない大切な人だもの。ハンドリムをこいで戻ろうとしたら、初瀬川さんと黒田さんに止められた。
「和真さん、コオお兄ちゃん、ヤスさんみんな逃げて!」
ありったけの声を張り上げた。足手まといになるからこれしか出来ないことが歯痒かったけど、みんなにこれ以上迷惑を掛けるわけにはいかないし、こはるちゃんに二度も悲しい思いをさせるわけにはいかないもの。
「あれなんで?」
女性が怪訝そうに顔をしかめた。
「未知は俺の大事な娘だ。娘夫婦の結婚式の邪魔をしたらただじゃおかねぇぞ。何度も釘を刺したよな?」
「邪魔してないわよ。お祝いに駆け付けんじゃないの」
「この期に及んでシラを切るきか」
「ヤス止めとけ。言うだけ無駄だ。さっきまでコンビニエンスストアの駐車場で酔っぱらって寝ていたただろう。悪いと思ったが安全なものと交換させてもらった。朝宮さん、借りた金はちゃんと返さないとだめでしょう」
ヤスさんと一緒にいた舎弟の言葉に女性の顔色がみるみる変わり、血の気がすーと引いていった。
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