588 / 588

真実はあまりにも残酷で

でも実際は違う。 嫉妬に狂い凶行に走ったのは紘子さんのほうだった。 「死人に口なしだ。火事で証拠はすべて灰となった。お爺ちゃんは娘と孫を守るために真実を闇に葬った。警察官として絶対にやってはいけない罪を犯した」 「大元の原因を作ったのは和彦だがな」 「あの人の浮気性は病気みたいなものだから一生治らないです」 「俺や和真さんの爪の垢を煎じて飲ませてやるか」 「そうですね。それであの人が変わるなら……無理だと思いますけど」 その時の赤ちゃんが成長し、大人になり、なんらかの方法で真実を知ったとしたらーー。考えただけでもぞっとし、背筋が寒くなった。 「四季は俺の身内ってことになってる。匿うことも可能だ。一宮さんとよく話し合い決めたらいい」 「卯月さん、有り難うございます」 彼と一緒に頭を下げた。 「ヤスは今後も四季の専属弾よけとして、カミさんに預ける。煮るなり焼くなり好きにしていい」 「煮るとか焼くとかそんなそんざいな扱いはしません。ヤスさんを引き続きお借りします」 彼の表情がきりりと引き締まった。

ともだちにシェアしよう!