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真実はあまりにも残酷で
でも実際は違う。
嫉妬に狂い凶行に走ったのは紘子さんのほうだった。
「死人に口なしだ。火事で証拠はすべて灰となった。お爺ちゃんは娘と孫を守るために真実を闇に葬った。警察官として絶対にやってはいけない罪を犯した」
「大元の原因を作ったのは和彦だがな」
「あの人の浮気性は病気みたいなものだから一生治らないです」
「俺や和真さんの爪の垢を煎じて飲ませてやるか」
「そうですね。それであの人が変わるなら……無理だと思いますけど」
その時の赤ちゃんが成長し、大人になり、なんらかの方法で真実を知ったとしたらーー。考えただけでもぞっとし、背筋が寒くなった。
「四季は俺の身内ってことになってる。匿うことも可能だ。一宮さんとよく話し合い決めたらいい」
「卯月さん、有り難うございます」
彼と一緒に頭を下げた。
「ヤスは今後も四季の専属弾よけとして、カミさんに預ける。煮るなり焼くなり好きにしていい」
「煮るとか焼くとかそんなそんざいな扱いはしません。ヤスさんを引き続きお借りします」
彼の表情がきりりと引き締まった。
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