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第一章・5
グラタンを作る間、波留は紫苑にいろいろと話しかけた。
「もうすぐクリスマスだね。来夢へのプレゼント、何がいいかなぁ」
「今日大学でね、来夢は教授に叱られたんだって」
「来夢、どこに就職したいか、紫苑知ってる?」
来夢、来夢、来夢。
全部、来夢の話だ。
そんな話に、何でもいい、ざまぁ、知るか、と短く答えながら、紫苑はグラタンをこしらえた。
「さ、できたぞ。食え」
「わ~い。いただきま~す」
忌々しいことに、ちょうど来夢もバスから上がって来た。
「お、いい匂い。俺の分は?」
「……」
いつものパターンだ。
来夢と波留は、紫苑にもたれかかって生きている。
それでも紫苑が二人を放り出さないのには、訳がある。
紫苑は、波留が好きなのだ。
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