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第一章・7
リビングのソファで、紫苑の眠れない夜が始まった。
(今頃、波留のやつ何してるんだろうな)
楽しくお喋りでもしてるのか、それとも。
(それとも、もうキスして……、それから……)
ダメだ。
今夜に限って、眠れない。
可愛い波留。
北陽高校は男子校のせいもあって、波留は入学と同時に皆のアイドルになった。
可愛いのは、何も姿かたちだけじゃない。
性格も、可愛い。
朗らかで、素直で、思いやりがあって。
ただ、紫苑が波留に惚れたのは、他の理由もあった。
クラスには必ずと言っていいほど一人はいる、陰キャ。
放っておくと、いじめの対象だ。
波留は、そんな生徒に自分から進んで話しかけた。
友達になり、彼に目に見えないバリアを張った。
『桜庭のダチなら、いじめるのはよそう』
そんな空気を作り出した。
そして紫苑は、波留に可愛いだけではない強さを見たのだ。
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