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第一章・8

「……ダメだ」  小林が、クリスマスに告る、なんて言い出したせいだ。  紫苑は、無性に波留が気になって仕方が無かった。  あいつは、どんな風に来夢に抱かれるんだろう。  あいつは、どんな声を上げるんだろう。  あいつは……、あいつは……。  気が付けば、紫苑は足音を忍ばせて階段を上っていた。  階段を上がりきった西側の洋間は、長兄の使っていた空き部屋だ。  紫苑は、そこに潜んだ。  自分の部屋の向こう、東側の洋間から細く明かりが漏れている。 「まだ寝てないのか?」  耳を澄ませると、話し声が聞こえて来た。 「ね、電気消してよ」 「たまにはいいじゃん。俺、波留のことしっかり見ながらヤりたいなぁ」 「もう、変態!」 「嫌なら、今夜はもうこのまま寝ちゃってもいいけど?」  どうやら、来夢は明かりを消さずにエッチしたいとごねているようだった。  話しているのなら、気がそれて勘付かれないはず。  紫苑は、そっと隣の和室に忍び込んだ。

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