9 / 69

第一章・9

 結局、来夢の部屋は暗がりになった。  オレンジ色のナツメ球の下で、二人は愛し合い始めた。  隣の部屋で、紫苑が息を殺しているのも知らずに。  引き戸の細い隙間から漏れる、明かり。  その光と共に、濡れた音が響いてきた。 「ん……、来夢……」 「波留」  二人はどうやらキスをしているらしい。  興奮と同時に、紫苑の胸に嫌な予感が広がり始めた。  今ならまだ間に合う。  ここから離れるんだ。  一階のリビングへ行って、ソファで丸くなって眠ってしまえ!  しかし、波留の声に引き留められた。 「あ、あぁん!」 「声、でかいよ」 「そんなトコ、齧っちゃ……、ダメぇ……」  甘い、揺れるような声。  紫苑は、その場から動けなくなってしまった。

ともだちにシェアしよう!