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第五章 俺はβなんだから
告白したい相手へのクリスマスプレゼントが決まった、と紫苑は小林から打ち明けられていた。
「何にしたんだ? 確か、素敵なプレゼントと一緒に告白すれば上手くいく、とか言ってたよな」
「うん、奮発した。G-SHOCKの、GA-2000。ベルトが簡単に交換できるから、気分で色を変えて楽しめるんだ」
「お前にしちゃあ、上出来じゃん」
そんな話を廊下でしていると、こちらへぱたぱた駆けて来る音がする。
二人の間に割って入り、紫苑の腕にしがみつく華奢な体。
「ま~た、コソコソして! 僕の噂でもしてた?」
「現れたか、北陽高校のアイドル」
紫苑は苦笑いしたが、小林は緊張した眼差しで彼を見た。
「そうだ、桜庭。俺、クリスマスに好きな奴にプレゼントあげようと思ってるんだけど」
こんな感じで、いいかなぁ、とスマホの画像を波留に示した。
「カッコいい! きっと喜んでもらえるよ!」
「桜庭にOKもらえたら、自信ついたよ」
部活があるから、と立ち去った小林の後に、紫苑と波留が残された。
「さっきの時計、素敵だったな。紫苑、僕に買って~」
「何で俺が。来夢に買ってもらえよ」
「あ、お腹すいた。紫苑の家で、ご飯食べてもいい?」
「話題、ポンポン変えるなよ」
それでも波留に邪険にできない紫苑は、一緒に帰宅した。
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